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バンビのような瞳のポール・ラッドで、ラブストーリーを再び!

バンビのような瞳のポール・ラッドで、ラブストーリーを再び!

シリーズ第3弾『アントマン&ワスプ クアントマニア』も公開を迎え、いまやすっかり“アントマン”として知られるようになったポール・ラッド。その前には、ジャド・アパトー一派として『俺たちニュースキャスター』『40歳からの家族ケーカク』などのコメディ作品で知られていたが、私にとってポールといえば、ヒーローものでもコメディでもなく、断然、ラブストーリーだ。そう心に刻んだのは『私の愛情の対象』と『幸せの始まりは』の2作で、どちらも折りに触れては観たくなる、個人的な親愛ムービー。役名は偶然にもどちらも“ジョージ”で、キャラクターにも共通点がある。

『私の愛情の対象』(98)は、TVシリーズ「フレンズ」のレイチェル役でブレイクしたジェニファー・アニストンが主演。恋人の子どもを妊娠していることに気づいたヒロイン・ニーナが、ルームメイトでゲイのジョージを子育てのパートナーに望むなかで、彼を男性として愛してしまうというもの。ものすごくイイ女なのになぜか恋愛には苦労する、というジェニファーの“十八番”がさく裂しているが、そのヒロイン・ニーナが本気で恋してしまうゲイの男性・ジョージ役をポールが好演している。

キラッキラの瞳と少しはにかむような笑顔。ひとめで“いい人”とわかる、小動物的な愛くるしいルックに加え、「ぼくがついてるからね」と寄り添ってくれるあふれんばかりの優しさ。おしゃべりや買い物にも嫌がらず付き合ってくれて、ダンスを楽しむパートナーとしても完璧…と、ジョージは女心のツボにもはまる要素のオンパレード。そりゃ恋に落ちないわけないよね~と思ってしまう。最初は、彼はゲイだからと割り切っていたはずのニーナも、しだいに「男性ではなく私を選んで!」と心がかき乱されていく。物語は、あれやこれやの末に、“常識に縛られない愛のカタチ”というひとつのハッピーエンドに落ち着くが、ニーナ同様、観ている私も「ジョージに出会ってよかった!」という気持ちに。以来、ジョージ=ポールは、私にとっての理想の恋人であり、親友であり、よき父親にもなってくれる(そう)人となった。

ポールはこの後、「フレンズ」に、レイチェルではなく、フィービーの恋人マイク・ハニガン役として出演。親しみやすくてチャーミングなフレンズ一派としてのなじみも抜群だった。ちなみに2012年には『ふたりのパラダイス』で再びジェニファーと共演しているが、ここでの役名もなんとジョージ! 何かつながりがあるのかは謎だが、内容的にはヒッピーコミューンに迷い込んだ夫婦役で、テイストも別物。もちろん、ジェニファーとの相性のよさは健在だった。

そしてもう1本、ポールの優しさフェロモンに癒されるのが、リース・ウィザースプーン共演の『幸せの始まりは』(10)だ。ここでのジョージは、傲慢な父親(ジャック・ニコルソン)の会社で働くビジネスマン役。父親の不正が元で会社を追われたあげく、片思いの女性には失恋し…と人生どん底状態のなか、体育会系女子のリサと出会い、彼女のタフな魅力に惹かれていく。ソフトボールチームをクビになったばかりのリサは、ジョージに安らぎを感じながらも、プロ野球選手マティの強引なアプローチに流されて三角関係に突入。リサはジョージとマティ、どちらを選ぶのか?という展開に。

アスリート仕込みでなにかと自分を律しようとするリサと、彼女の悩みにじっと耳を傾け、ときにはその奇行を見守るなどあれやこれやと彼女を支えるジョージ。その関係性はロマンチックコメディの典型ともいえる凸凹ぶりだが、他人への愛情を惜しまない彼は、『私の愛情の対象』のジョージ同様、献身的で安らぎを与えてくれる存在。そういう優しさに慣れていないリサが、「なによ、バンビみたいな目をして!」とジョージに半ギレするシーンが笑える。確かに、あんなつぶらな瞳で見つめられたら、恥ずかしさのあまり困惑してしまう。

この作品で私が最も好きなのは、実はジョージとリサ以上に、ジョージとその部下でもあるアニーとの友情関係だ。表現力がズバ抜けているキャスリン・ハーンが演じるアニー。彼女は、苦境に追い込まれたジョージを気遣い、料理を届けたり、彼を救うため機密事項をもらそうとまでしたりと、とにかく味方であろうとする。「ボスは本当にやさしい」というアニーのセリフが物語るように、ここでもジョージの優しさが関係の礎。また、恋人との子どもを出産したアニーが、病院でジョージとリサが見守る中、恋人からプロポーズを受けるシーンはすこぶる感動的だ。嘘がなくてあたたかくて愛にあふれていて…。ジョージがプロポーズの録画を失敗してしまい、4人で再現を試みる…という泣き笑いの顛末も含めて、最高のプロポーズシーンだと思う。

最後にポールに戻って…、彼の持ち味が“いい人”アントマン役にいかされていることは間違いないが、そろそろまた、バンビみたいな瞳をいかしたロマンチックなラブストーリーを観てみたい。相手役には、おしゃべりでちょっと強気なキャラクター、たとえば『(500日)のサマー』のズーイー・デシャネルや『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』のクリスティン・ウィグ、『ラブ・アゲイン』のマリサ・トメイなんかはどうだろうか。役柄としては、翻弄するよりも翻弄される(のを許してくれる)ほうがいい。きっと彼は、バンビ効果でもって、いつの間にか相手を優しさに包み込んでしまう…。それが、私にとってのロマンチックストーリーの適役であり、ポール・ラッドなのだ。

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