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おじいちゃんのこだわリズム!
進化し続ける「水平開き®」ノート
この作業はやっぱり紙で…!ラフへのこだわり
雑誌編集のプロセスの一つに“レイアウト”がある。「文章をどのくらい、どこへ置こうか?」「写真はどのくらいの大きさで、いくつ、どこへ配置しようか?」「タイトルはどんなふうに、どんなデザインで見せようか?」といった感じで、企画にあわせた頁の構成を考えて“ラフ”を引き、デザイナーに渡す。言わば頁の設計図。WEBデザインにおけるワイヤーに相当する。
情報誌、カルチャー誌が週刊、隔週刊で頻繁に発行されていたころは、各雑誌毎に専用のレイアウト用紙が刷られ、それに見開き単位でラフを引くのが主流だった。しかし、この10年で雑誌は次々休刊、廃刊となり、また若手編集者はレイアウト作業をタブレットで行うのが通例となり、こうした旧態依然の取り組み方も大分減ったはず。
とはいえ、紙と向き合って、線を引いては消して…を繰り返し、納得のいくレイアウトを引くことで仕事を成立させてきた堅物の自分は、今も紙へ消せるボールペン(ここだけはシャープペンシルから進化)で「ああでもないこうでもない」とラフを引いている。
悪く言えば“時代遅れ”。前向きに捉えれば“こだわり”。これまでこういうのとか、こういうのとか構成してきた。どれもありがたい評価をいただいているので、何と言われようと譲れない仕事の“こだわリズム”だ。
“こだわり”を支えてくれる“こだわり”
専用のレイアウト用紙は、雑誌にあわせたサイズで、細かな方眼が薄く惹かれていて、誌面上のさまざまな要素の配分を考えながら引く上でとても便利だった。ところが、先述の通り専用のレイアウト用紙はほぼ絶滅し、どうしたものか…と思った矢先に知ったのが、
中村印刷所の「水平開き®」ノートだった。
東京都北区の中村印刷所は、1938年(昭和13年)創業の印刷会社。印刷一筋な下町職人である同社の中村輝雄社長は、どの頁を開いても、紙面が見開きで水平になる「水平開き®」の特許を有するノートを開発した。
よく、ノートを見開いたときにフワッと頁が膨らんだり、左右の段差が気になってしまうケースがあると思うが、「水平開き®」ノートは特殊技術によりどこを開いても、きれいに見開き段差が生じない。
ノート全面が方眼仕様で、精密な図や線を引いたり、細かな書き込み、各々のノートアレンジなど、さまざまな用途で“こだわって”ノートを使う人向けの“こだわり”ノート。自分はレイアウト作業で本当に重宝させてもらっている。
しかも、この「水平開き® 」ノート、軽く力を入れて見開き頁を外すと、そのまま見開き用紙としても用いることもできる。この辺りは、ぜひ中村社長による動画ポストもご覧いただきたい。
このノートが話題になったのは8年前の2016年1月1日。当時の中村印刷所は廃業寸前だったのだが、中村社長の孫娘が、おじいちゃんのノート=「水平開き®」ノートをTwitt紹介したTweetが拡散され、ノートの存在が全国的に周知された。
この出来事は当時、それまで良い技術、良い商品を製造してもPRできず苦悶していた中小企業にとってSNSマーケティングの可能性を示した事例としても注目を集めた。
目に優しい“緑のノート”と、脳すっきり“青いノート”
ところで、写真に上げているノートの地色が白ではなく“薄緑”なのが気になっている人もいるかもしれない。「水平開き®」ノートは白地がベースなのだが、このタイプはハンズ(東急ハンズ)で購入した「目に優しい」タイプ。
最近は老眼気味の上、少し視覚に過敏気味で白い光が差すと一気に文字が読みづらくなる自分には、この薄緑色記帳のノートはそういった光の加減を気にすることなく使うことができ、とても助かっている。
この「目に優しい」タイプが誕生した経緯は中村社長ととある学生のやり取りによる。下記のポストを参照のほど。まさに、使う側目線に立った紙選び、ノート作りへの中村社長のこだわりの見事さ。
SNS上でのブレイク後も、中村社長は「水平開き®」ノートの大手企業とのコラボ、海外展開などさまざまな取り組みを実現。最近は、特殊な「OKシナプス」紙と「水平開き®」を組み合わせた「脳スッキリノート」を展開している。こちらは紙面が青色になっている。
さまざまなアイデアや思いを紡いで、下町職人のモノづくりへのこだわりは、きっと生涯進化し続ける。