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ビジネスケアラーの救世主?インド映画の介護コメディ『ジャパン・ロボット』を観た。

ビジネスケアラーの救世主?インド映画の介護コメディ『ジャパン・ロボット』を観た。

インドのビジネスケアラーを助けたのは、日本製ロボット!?

インド映画といえば、唐突かつ華やかなミュージカルや血沸き肉躍るバトルアクションで話題になることが多いが、今回紹介する『ジャパン・ロボット』(英題:Android Kunjappan Version 5.25)は、インドの片田舎が舞台の介護コメディ。そういった要素は一切ない。

インド・ケーララ州。エンジニアの息子は、日本企業「キョウトダイナミクス」に就職が決まり、ロシア支社へ赴任することに。ところが、家で二人暮らしの父親がこれに猛反対。老いた父親は身内も手を焼く超超頑固者。身体は動くものの糖尿持ちで、誰かが面倒を見なければ危なっかしい状態だ。

息子は、自分の代わりに身の周りを世話するヘルパーを雇うものの、父親はカーストや料理の味付けに難癖をつけてヘルパーを怒らせてしまう。これでは息子も海外勤務など安心して出来もしない。

息子も決して若くなく、これまでも老親の介護を優先し思うような就職ができず、今回がラストチャンスだと考えていた。そんなビジネスケアラーとしての悩みを抱える息子に、キョウトダイナミクスは開発・実証中の介護ロボットに父親の面倒を見させる提案を持ちかける。

上記の予告でも確認できるが、この日本製ロボット(ロシア経由)、二足歩行の下半身はホンダの「ASIMO(アシモ)」、胸部モニター付属の上半身はソフトバンクの「PEPPER(ペッパー)」を組み合わせたよう。愛嬌のある頭部は、筆者的には「サイボット ロボッチ」を思い浮かべる。

主人には尽くす、まさにケアテックな「ドラえもん」

年間を通して温暖・多湿な熱帯のケーララ州の片田舎に突如現れた介護ロボット“クンニャッパン”(息子は父親に「日本の高位カーストのロボット」と紹介」。電気製品とはほぼ無縁な父親は激怒し、最初はクンニャッパンの電源を落とし、無視を決め込む。しかし、どれだけ邪険に扱っても冷静に受け止め応えるクンニャッパンに、父親も徐々に心を開いていく。

ざっとクンニャッパンの紹介&別の動画も。

以前、ケアテック業界の方から「生成AIやロボットに高齢者の話し相手になってもらえたなら、介護の現場は本当に助かる」という意味合いの話を聞いたことがある。決してネガティブなコメントではなく、疲れ知らずの生成AI・ロボットなら24時間いつでも会話の相手ができ、何らかの理不尽な感情をぶつけられても怒ったり傷ついたりすることがないからだ。

ひたすらクールに、とはいえ冷たいわけではない対応に徹するクンニャッパンの姿を見て、このコメントの重みを理解した。例えとして、「右」と言えば「斜め左」、「左」と言えば「知らん」というくらい異次元にひねくれた超超頑固者の父親は、どこへ行くにもクンニャッパンを同行させ、家事も任せる。沐浴まで手伝わせるのがインドならでは。

帰省した息子には「怒りもせず、話を聞き続けて、下の世話もしてくれる。お間にそこまでできるか?」という感じで話すほど、父親はクンニャッパンに愛情を注ぐ。そう、おじいちゃん=のび太の行く末を案じ、セワシがドラえもんを託したような感じ。クンニャッパンは、実質“介護版ドラえもん”だ。

そして突きつけられる“愛”と”介護”の難しさ”

愛嬌があって、周囲への挨拶や気配りを絶やさないクンニャッパンは、地元の人々からも好奇の目を注がれる。インド神話を(ネットで学習し)スラスラ答え、驚いた人々から「神様」「ハヌマーン」と拝まれたり、あるお婆さんから「裸でウロチョロするのは良くない」と諭され、父親がクンニャッパンに服を仕立てて着させたりする。挙句の果てにクンニャッパンの運勢を占い師にみさせ、父親が息子にクンニャッパンの誕生日を尋ねたり…。

こうしたクンニャッパンと父親、周囲を巻き込んでの笑えるやり取りは、さながら「ロボット8ちゃん」「バッテンロボ丸」といった「東映不思議コメディーシリーズ」を想起させなくもない(世代限定とは思いつつ)。

画像はAmazon Musicより

そんなユーモアに満ちたやり取りの中、父親は、かつて愛した女性への想いを蘇らせ、“愛”について考え、クンニャッパンへ問う。その心の変化は、これまで頑な過ぎる頑固さから見失っていた“他人を愛する思い”が、クンニャッパンとの日々を通じて掘り起こされたと言えるだろう。

しかし、ロボットは愛を学習し、愛を模倣できても、心ある“真実の愛”を持つことができるのだろうか? この“愛”の捉え方が、コメディでは終わらない本作の衝撃的なクライマックスを生み出している。

ミュージカルもバトルもない長尺のインド映画だが、中だるみなく笑わせて、介護についても考えさせる良作。なかなか日本では上映・配信の機会が稀だが、チャンスがあったならビジネスケアラー、ケアテック関係者にはぜひ鑑賞してもらいたい。

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