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ときどき自分の無知を気づかせ、問いかけてくれる、アンディ・ウォーホルのポスター

ときどき自分の無知を気づかせ、問いかけてくれる、アンディ・ウォーホルのポスター

今回ご紹介するのはわが家のリビングに置かれているアンディ・ウォーホルのバナナのポスターです。

こちらは、先日香港で開催されたとあるアートオークションにて2億4,000万円で落札して手に入れた一点ものでして、、、なんてことはあるはずもなく、20年以上前にハンズで1,500円とかで普通に買った大量生産品です。

田舎に住む中学生だった自分は、雑誌だったか、なんとなくセンスのある友達だったか、何の影響だったか忘れてしまったのですが「どうやら部屋にポスターがあるとかっこいいらしいぞ」という確信に満ちた感覚を持ち、自分の持つ全知識を集約し「いい感じのポスターはなんとなくハンズにありそう!!」ってことで名古屋の東急ハンズ(当時)に向かいました。というか親に連れて行ってもらいました。(自分のわがままに付き合ってくれてありがとう)

当時はヴィレヴァン的なちょっとおもしろいものが置いてある雑貨屋が出てき始めたタイミングでもあったような気がしており、自分も少しひねりの効いた、くすっと笑えるようなものを好んで、今思えばどうでもいい(しかしある意味そんな当時の自分が尊いと思える)ものを買っていました。

実家の近くには当然ヴィレヴァンなんぞございませんが、今考えると地元のこだわりおじさんの趣味が高じて店のはじっこでまったく関係ないおもちゃや雑貨を置いてただけだよなと思うような店はあったりして、そこで幼いわたくしはキャッキャしていたのです。

そんな自分がたどり着いたハンズの売り場にはいろいろなポスターが置いてあったのですが、このポスターが目に入った瞬間「バナナが主役でこんなデカいなんてめちゃくちゃおもろい」「右下に入ってるロゴ?みたいなのもなんかおしゃれ(筆記体=おしゃれの認識)」と思い、おこづかいからなけなしの1,500円を捻出したのです。ポスターフレームの存在は忘れてまして笑、親が買ってくれたんだったかな。

手に入れたポスターを自分の部屋に置き、しばらくはただのおもしろポスターという認識で月日が過ぎていったのですが、高校生になったある日、雑誌でアンディ・ウォーホルというアーティストの存在を知り、このポスターの右下の“なんかおしゃれなロゴ”はアーティストの名前であり、これはただのバナナの絵ではなくアートであるらしい、と分かり「は?このおもしろバナナが!?」と脳天を撃ち抜かれるような衝撃を受けたのです。

最近はニルヴァーナやジョイ・ディビジョンなどのバンドのことを知らずにTシャツを着ている人を揶揄するような風潮もあり、分かるような気もする一方で、ちょっと怖いような気もしますが、それはまさに自分もウォーホルなど知らずにポスターを買っていたという経験があるからなんですよね。「自分がなにげなく買ったものを含めてすべてをちゃんと理解していると言えるだろうか?」と思うとそんなことはなくて。

そしてこのポスターから衝撃を受けたのは、そのときだけではありませんでした。

大学生になって、音楽が大好きになり、タワレコに通い詰めていた時期に過去の名盤の輸入盤CDセールの棚を漁っていたら、突然バナナが釣りあがったのです。「え?」

どうやらこのバナナはアンディ・ウォーホルがアート作品として出したものでありつつ、それをヴェルヴェット・アンダーグラウンドというバンドがアルバムのジャケットアートワークとしても使っているらしいと初めて知りました。(ポスターの左上にはちゃんとバンド名が入ってるんですけどね。。)

「いや、調べろよ」案件ですし、単に無知だっただけといえばそれまでなのですが、幼い自分がおもしろがって買ったバナナのポスターが、複数の側面を持ったものだったこと、そしてそれを知ったのがまったく別のタイミングだったことが自分の中の経験としてとてもおもしろくてですね。

ポスターに汚れがついてしまったり、水をこぼしてしわしわになったり、日に焼けた経年変化で黄色いバナナがほぼ白くなったりしながらも笑、中身はそのままでポスターフレームを買い替え、今もリビングに飾っています。(奥さんがこれをどう思っているかはいったん置いておきましょう。いったん)

ポスターはものごとに興味を持つきっかけにもなっており、アートと音楽、そしてファッションのつながりにも意識的になりましたし、去年はNHK『映像の世紀 バタフライ・エフェクト』でヴェルヴェット・アンダーグラウンドが特集されており、バンドの活動やルー・リード、それに影響を受けたものの歴史を知ることもできました。

アンディ・ウォーホルは作品や活動を通じて「アートとは何ぞや」という部分を問いかけ続けたアーティストだと思っているのですが(参考となりそうな記事:何でもアリのおきて破り。ウォーホルの快楽)、自分が何も知らずにポスターを買ったことはまさにその問いに繋がる行動だったのではないか、などと変に考え始めたりするとさらにポスターへの愛着も湧いちゃったりします。

こちらはそんなウォーホルのことをもっと知れたらと思って行った、国立新美術館で2013年に開催された『アメリカン・ポップ・アート展』(アンディ・ウォーホルの作品なども展示)で買ったキャンベルスープ缶。

これもこの展覧会だけでしか買えないようなものではなく、単なる量産品なので、あの場所で買い、それをずっと保存する意味があるのか分かりませんが、何に価値を見出すかはその人次第ということで、それもウォーホルの問いに繋がる気がしますし、この記事のちょいネタとしても使えたのでよしとしましょう笑

また今後も、このポスターに関することで新たな発見ができたりするんじゃないかなと思うと、人生ももうちょっと楽しめるかなと。(最後に急にデカい話)

以上、稲垣でした。

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