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作風はハードボイルド、観客とはハートフル。神威杏次監督作『7WAYS』を見てきた

作風はハードボイルド、観客とはハートフル。神威杏次監督作『7WAYS』を見てきた

2つの舞台を往来、謎に包まれた展開に引き込まれ…

舞台は人里離れた孤島のモーテル。宿泊者は作家のナオ(中川ミコ)と舞台俳優の銀次(坂本三成)。マスター(蜂谷英昭)が営むこのモーテルへ、隣島から船でやってきた成瀬(森脇和成)と嶋村(萩田博之)、嵐で街への一本道を塞がれ、行き場を失った千夏(萩原佐代子)と涼香(牧野美千子)も宿泊することに。それぞれに事情を抱える7人は、ラジオから流れる宝石強盗殺人事件のニュースをきっかけに、互いへの疑念を抱き出す――。

舞台は変わり、とある街で探偵のクロネコ(神威杏次)は、香織(たかはしあいこ)と名乗る女性ら、ある殺人事件の容疑者である妹を助けてほしいと依頼を受けいた。裁判で既に無罪の判決を受けている妹を助けるとはどういう意味なのか? 黒猫に協力を求められた警部の麻生(工藤俊作)とミサト(平塚千瑛)は、その事件に関与した7人を事情聴取する――。

池袋シネマ・ロサで上映中の『7WAY』は、2つの舞台を自在に往来して繰り広げられるサスペンス・エンターテインメント作です。モーテルに模した窓のない倉庫のロケーションと、ざらざらとしたフィルムの質感、時折登場する意味深なタイプライターの描写が、物語全編に無国籍かつハードボイルドなテイストを漂わせ、作品の世界へ引き込まれていきます。

この2つの舞台を往来する物語の詳細は、これ以上語ると核心に触れてしまうので詳しくは書けませんが、ハリウッド映画を想起させるような予想の難しいドラマを堪能できることは間違いありません。その上で「あのシーンにはどういう意味があったのか?」ともう一度確認で見たくなる…というタイプの映画です。

観客に寄り添い、一緒に楽しむ映画作り

監督・脚本・撮影・編集を務めたのは、劇中でクロネコを演じている俳優の神威杏次さん。その昔、メタルヒーローシリーズ『特捜エクシードラフト』(1992年)で“カルロス東郷”という猛烈なパワーと目力が圧倒的なヴィランを、当時は“神威狂児”の芸名で演じられていて、寝ぼけ眼でリアル視聴していた自分には猛烈なインパクトで、その存在が脳裏に焼き付きましたよ。

2018年から自ら脚本・監督を務めてインディーズ映画製作に乗り出し、長編2作目『スモーキー・アンド・ビター』(2020年)、3作目『ムーンライト・ダイナー』(2021年)はバルセロナ、マドリード、ロンドン、ニースなど海外映画祭へ出品、さまざまな部門で受賞されてきました。

そうしてグローバルに実績を積み重ねてきた神威作品には、メジャーでは困難な“観客との距離感”が漂い、それが大きな魅力となっています。シネマ・ロサでの初日は神威作品…というより監督&キャスト、スタッフを含む“神威組”を応援するファンで席が埋まり、舞台挨拶も終始、観客が一体となって公開を喜ぶあたたかな空気に包まれています。製作資金をクラウドファンディングで募り、そのサポートに神威組が着実に応えてきた信頼関係のようなものが伺えます。

神威杏次監督(左)と、成瀬を演じた元・猿岩石の森脇和成さん(右)

また、『7WAYS』はその特性上、ひとつ演出を間違えればストーリーの難解さが際立ち、観客が置いてきぼりの映画になりかねません。その危うさの回避(時には説明的なセリフをあえて挟んでくる…など)を徹底されたのではと、映画から感じ取りました(…と、思っていたら、実際にキャストの理解度や意見も組み込みながら上手にチューニングされていたことがパンフから読み取れました)。

観客と寄り添うような距離感で作られたであろう『7WAYS』の上映後には、ロビーで神威監督やキャストの方々がファンと触れ合い、映画の感想を語り合う光景が広がります。常連らしき方も、(自分も含め)初見の観客にも、一人一人と丁寧に言葉を交わし、時には記念写真に納まる姿が本当に微笑ましいし、より映画を応援したくなります。

スーパー戦隊ヒロイン共演にガチ感動&感謝

そんな『7WAYS』を見た経緯には、キャストの存在が大きく関わりました。モーテルを訪れる女性2人組を演じられた萩原佐代子さんと牧野美千子さんは、知る人ぞ知るスーパー戦隊シリーズの歴代ヒロイン! 萩原さんが「科学戦隊ダイナマン」(1983年)のダイナピンク、牧野さんが「超電子バイオマン」(1984年)のピンクファイブと、それぞれ桃色の戦士を演じられて、当時小学2~3年生だった自分にとっては、永遠の憧れのヒロインです。

昨今でスーパー戦隊シリーズのヒロインは注目を集める機会は多いでしょうが、お2人が活躍されていたころは、まだまだ子ども番組として広く注目されるわけでもなく、その後の活躍や足跡を追うことも難しい時代でした。それが、役回りが変われど、2つの番組のヒロイン共演が今見られたことへ、本当に感動と感謝。心は超電子級の大爆発です(意味不明)。

※公開を知るきっかけになった萩原さんのインタビュー動画

そんな昭和50年男のミーハーな心をくすぐられた結果、出会えたハードボイル(でありハートフル)な神威組の作品。遅ればせながら、その世界観に浸されて行こうと思います。

※『7WAYS』🇯は池袋シネマ・ロサで6月3日〜16日、大阪シアターセブンで7月15日〜21日上映予定

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